地球大気における湿潤対流の定式化同様, 大気の乾燥成分と湿潤成分の
分子量の差を密度の式には考慮するが, 熱の式には考慮しないような
系を考える. またガスは理想気体であるとみなす.
このような系では温位 が保存量として使える.
水平鉛直 2 次元大気の状態を
気温 , 圧力
, 風速
, 密度
で表現する場合,
基礎方程式系は以下のようになる.
各分子に対する状態方程式より
温位は乾燥断熱状態における保存量である.
乾燥断熱状態を表す熱力学の式は (A.18) より
温位は
,
が一定であるとみなせる
場合に定義される.
予報変数として温位を用いる際には
,
があまり大きく変化することを許容しないことを前提とするので, 計
算の適用範囲に制約が加わることに常に注意しなければならない.
凝結物の密度も含めた仮温位 を導く.
全圧
を変形すると,
密度の時間発展の式は
水平鉛直 2 次元大気の状態を
温位 , 無次元圧力
, 風速
, 密度
で表現する場合,
基礎方程式系は以下のようになる.
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(A.52) |
運動方程式の圧力勾配は, 温位とエクスナー関数を用いることで得られる.
(A.46), (A.52) より
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(A.53) |
圧力方程式は密度の式と連続の式を組み合わせることで得られる.
まず密度 の全微分を計算すると,
準圧縮方程式系では, 変数を基本場と擾乱場に分離し, 線形化を行う.
変数を基本場と擾乱場に分離し, 基本場は静水圧平衡にあると仮定する.
この時, 変数は以下のように書ける.
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(A.57) |
水平方向の運動方程式を基本場と擾乱場に分離する.
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鉛直方向の運動方程式を基本場と擾乱場に分離する.
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(A.59) |
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(A.60) |
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(A.63) |
Klemp and Wilhelmson (1978) では, 非断熱的な加熱による熱膨張と
凝結に伴う圧力変化を無視しているが, 本モデルではこれを無視しない.
(A.57) に (A.39), (A.40) を代入する
と,
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熱の式を平均成分と擾乱成分に分離する.
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凝結成分の比湿の保存式についても, 変数を平均成分と擾乱成分に分離する.
熱の式と同様に, 以下のように書ける. 但し, 生成項, 落下項は擾乱成分のみ
存在すると仮定する. この仮定は平均場では凝結は生じていないと考えることに
等しい.
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(A.69) | ||
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(A.70) | ||
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(A.71) |
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(A.72) |
準圧縮方程式系におけるエネルギー方程式を導出する.
(A.59), (A.65) にそれぞれ
,
を掛けて足し合わせると
(A.88) の左辺は全エネルギーの時間変化を表している. 左辺の被積分関数の第 1 項, 第 2 項, 第 3 項はそれぞれ運動エネルギー, 浮 力による位置エネルギー, 弾性エネルギー(熱エネルギー)を表す. 右辺第 1 項は準圧縮近似によって現れる項であり, 右辺第 2 項, 第 3 項, 第 4 項, 第 5 項, 第 6 項はそれぞれ凝結, 運動量の乱流拡散, 熱の乱流拡散, 基 本場の鉛直温位勾配, 放射と散逸によるエネルギー変化率を表している. 右辺第 1 項は一般にゼロとなることはないので, 非断熱加熱や乱流拡散や基本 場の空間変化が存在しなかったとしても, 右辺がゼロとなることは無い. 即ち, 準圧縮方程式では全エネルギーが保存されることはない.
準圧縮方程式系は以下のようにまとめられる.