付録E     下層で飽和比一定, 上層で等温である基本場温度分布に ついて

Colaprete et al.(2003) の数値実験では初期に飽和比が一定である温度 分布を与えている. ここでは下層で飽和比一定, 上層で等温である基本場温度分布 421#421 を与える場合を考える. 上層での温度 422#422, 下層での飽和比の値 423#423, 地表面圧力 424#424 は既 知であるとする. 先ず飽和比一定の層での温度分布 425#425 を求める. 基本場においては静水圧平衡が成り立つので,

426#426     (E.1)

となる. 飽和蒸気圧を 427#427 とすると,
428#428     (E.2)

が成り立つ. 式 Tprof2 を式 Tprof1 に代入すると,
429#429     (E.3)

となる. ここでクラウジウス・クラペイロンの式
430#430     (E.4)

及び理想気体の状態方程式 388#388 を用いると,
431#431 30#30 432#432  
433#433 30#30 434#434 (E.5)

となる. 435#435 での温度を 436#436 とし, 式 Tprof5 を 435#435 から 437#437 まで積 分すると,
438#438     (E.6)

となる. Antoine の式
439#439     (E.7)

において 435#435 の場合を考えると,
440#440 30#30 441#441  
442#442 30#30 443#443 (E.8)

となる. 式 Tprof8 を式 Tprof7 に代入すると,
444#444     (E.9)

となる. 更に温度一定の分布 445#445 と飽和比一定の分布 446#446 が交わる高 度を 447#447 とすると, 式 Tprof9 より
448#448 30#30 449#449  
450#450 30#30 451#451 (E.10)

となる. 以上より,

452#452 (E.11)

となる. 但し温度分布を式 Tprof11 と与える場合, 453#453 に温度勾配の不 連続が存在し, 局所的に大きな温度の拡散が生じてしまうことになる. そこで実際の数値計算では, 以下のように重み関数 454#454 を導入し, 温度一定 の分布と飽和比一定の温度分布をなめらかにつないだものを与えている.
455#455 30#30 456#456 (E.12)
457#457 30#30 458#458 (E.13)

但し 459#459 は温度分布の遷移の特徴的な長さスケールである.

Yamashita Tatsuya 2012-09-11