本来、IPマスカレードなどを利用して内部ネットワークを構築する場合は
解説 「IPマスカレードとは?」
の図の通りに、
外部ネットワークと内部ネットワークとは物理的に
切り離されています。(ルータで中継されてはいますが。)
よって、グローバルIPアドレスが使用できる場所ではプライベートIPアドレスでの
接続ができず、逆にプライベートIPアドレスが使用できる場所では
グローバルIPアドレスによる接続はできません。
しかし、内部ネットワークの線を外部ネットワークの線と
繋いでしまうことで
(詳細は以下で説明)グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレス
が共存できてしまう環境を構築できます。
こうすると、グローバルIPアドレスを使用できる場所からプライベートIPアドレス
で接続することもできるようになります。
専攻ネットワークではプライベートIPアドレスを利用する際にはDHCPを利用して
プライベートIPアドレスを取得し、通信することになります。
作業は非常に簡単です。ルータ用のパソコン(blue)の
内部用のネットワークカード(eth1)に繋いであるネットワーク線を
グローバルなネットワークにつながっているハブに
つなぐだけです。図で示すと以下のようになります。
配線図(専攻ネットワークの場合)
上記での配線で、なぜグローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスが
共存できる環境ができたのか解説します。
[3.1] DHCPの動作
下図のコンピュータを例にとって説明します。
このコンピュータがグローバルIPアドレスを持っていた場合に
通信できることは図より明らかです。
では、このコンピュータがグローバルIPアドレスを持っておらず、
DHCPでアドレスを要求するとします。
このLAN上でDHCPクライアントを受け付けるのは
blueの内部ネットワーク側(eth1)だけなので、
そこでクライアントの要求を受け付け、プライベートIPアドレスを割り当てます。
[3.2] Internetとの通信
上記でプライベートIPアドレスを割り当てられましたが、
このIPアドレスでは直接Internetと通信できません。
途中でIPアドレスを変換してくれるIPマスカレード(もしくはNAT)
のルータを中継する必要があります。
もちろんこの場合のルータはblueです。
通信の際のデータの道程は以下のようになります。
- コンピュータから送信されたデータは
blueの内部ネットワーク側(eth1)でのみ
受信されます。
(プライベートIPアドレスでの送信のため直接ルータAのところへ
データが到達しても、ルータAから外へ出ることはできません。)
- blueでIPマスカレードによって「送信元のアドレス」を
プライベートIPアドレスから
グローバルIPアドレス(blueが割り当てられているもの)に変換します。
これによって、今まで「プライベートIPアドレスからのデータ」だったのが
「グローバルIPアドレスからのデータ」となり、直接Internetへ
データを送れるようになりました。
- そこから先はblue自身がデータを送信するのと同じように
振舞います。つまり、先ほどのデータは外部ネットワーク側(eth0)から出て、
ルータAを通り
(今度はグローバルIPアドレスからの送信なので通過できる)、
Internetへと送られていきます。
- データが送り返されてきた場合は今までと逆の順序をたどり、「Internet」→
「blue」
(今度は「宛先のアドレス」をグローバルIPからプライベートIPへ変換)→
「送信元のコンピュータ」という経路を通ってきます。
上記の説明からもわかる通り、例え同じ場所からの通信でも、
グローバルIPで通信する場合と、プライベートIP(DHCPで取得)で通信する場合は
通信経路が異なります。つまり、
- グローバルIPアドレスでの通信は、そのコンピュータとInternetとで
直接通信し、blueに依存しない。
- プライベートIPアドレスでの通信は、DHCPでのIPアドレスの取得や
IPマスカレードでのアドレス変換において
blueを必ず中継しなくてはならない。
(blueが機能していないと通信できない)