ms(7)

Date: 1998/11/30
Source: TOYODA Eizi

名前

ms - 各種文書のための htroff マクロパッケージ

書式

htroff -ms [ options ] filename ...

説明

ms はさまざまな文書のための htroff(1) マクロパッケージです。

使ってもよい組み込み機能

htroff 組み込みリクエストのうち以下のものは -ms マクロパッケージの挙動を混乱させるおそれがありません:

.bp
改ページ
.br
改行
.sp n
n 行の空行を挿入
.ce n
以下の n 行をセンタリング

エスケープシーケンスのうち \f \s を使っても問題はありません。 たとえば \fIword\fRword を斜体にするものです。

リクエスト

.AB x
摘要 (アブストラクト) をはじめます。 もし xno ならば、 アブストラクトの先頭に Abstract という見出しを立てません。
.AE
アブストラクトの終わり。
.AI
著者の所属。
.AM
(現在の版はなにもしません) 元祖 troff ではアクセント記号のための文字列レジスタの定義を、 効率は劣るがより見栄えのするものに変更するものでした。
.AU
著者の名前。 著者が複数いる場合は任意個の .AU.AI を並べる ことができます。
.B [ x ]
x 太字 にします。 もし x が指定されない場合は段落末までのテキストをすべて太字にします。
.B1
以下 .B2 までのテキストを枠に入れます。
.B2
枠で囲む領域を終了します。
.BD
ブロックディスプレイ (全体で中央寄せされたディスプレイ; ディスプレイについては.DS 参照) を始めます。 現在の実装は手抜きのため .ID と等価になっています。
.BX x
x を枠に入れて印字します。
.CD
各行ごとに中央寄せされたディスプレイ (.DS 参照) を始めます。 現在の実装は <DIV ALIGN=CENTER><PRE>...</PRE></DIV> を生成します。
.CT
章のタイトル。 現在の実装は <H2> タグを用いています。 元祖 troff ではこのマクロは .TM で論文モードを選択したときだけ使えますが、 もちろん私はそんなけちな制限はつけません。 ただしそのことに依存して 無意識のうちに移植性のないドキュメントを書く可能性に留意してください。
.DA x
ページフッタ 文書末尾に表示されるフッタに文書作成の日付 x を出力します。 元祖 troff では各ページにあるフッタに日付を出力させるもので、 x が省略された場合は現在の日付を用います。
.DE
ディスプレイを終了します。
.DS [x [y]]
ディスプレイ (行の追い込みを行わない領域) を開始します。 現在は <PRE> タグで実装されています。 文字 x には ILCB のいずれかを与えます、これらはそれぞれ .ID, .LD, .CD, .BD に対応します。 x が与えられない場合は I とみなされます。 y は本来インデント幅を与えるものですが、htroff では無視されます。
.EF x
(現在の版はなにもしません) 偶数ページのためのフッタ定義。 x には troff の .tl リクエストのための ' で区切られた 3つの文字列を与えます。
.EH x
(現在の版はなにもしません) 偶数ページのためのヘッダ定義。
.EN
数式用ディスプレイを終了します。
.EQ x y
元祖 troff ならば eqn(1) によって処理される、 数式用ディスプレイを始めます。 文字 x には LIC のいずれかを与えます。 これらは元祖 troff ではそれぞれ左寄せ、インデント、中央寄せに対応します。 が、現在の版では数式がサポートされないため、 単に <BLOCKQUOTE> されるだけの実装になっています。 第2引数 y は数式番号となります。
.FE
脚注段落を終えます。
.FS
脚注段落を始めます。 現在の実装では脚注は .CT, .SH, .NH による見出しの前または文書の末尾にまとめて枠入りで出力されます。
.I x
x を斜体で印字します。 もし x が与えられない場合は以下段落末までのテキストをすべて斜体にします。
.ID y
インデントされたディスプレイ (.DS 参照) を始めます。 y は本来インデント幅を与えるものですが、無視されます。 実装は <BLOCKQUOTE><PRE>...</PRE></BLOCKQUOTE> を生成します。
.IP x y
ハンギングタグ x 付きのインデントされた段落を始めます。 実装は <DL><DT>...<DD>...</DL> を生成し、 インデント幅 y の指定は無視されます。
.IX x ...
[未実装] 語たち x (元祖 UNIX troff では 5 語まで) を目次に出力すべく保存します。 このときなぜか改行がおこるというのが元来の仕様です。
.KE
(現在の版はなにもしません) キープ領域を終了します。
.KF
(現在の版はなにもしません) 浮動キープを始めます。テキストはページの残りを埋めるように配置されます。
.KS
(現在の版はなにもしません) キープ (一つのページに収まるように収集されるテキスト) を始めます。
.LD
左寄せされたディスプレイ (.DS 参照) を始めます。 実装はただの <PRE> タグです。
.LG
(現在の版はなにもしません) 文字を大きくします。
.LP
左寄せ (ブロック) 段落をはじめます。
.MC [ x ]
(現在の版はなにもしません) 多段組の組版を始めます。 x にはカラムの幅を指定します。 省略すると2段組となります。 リセットが起こります。
.ND x
(現在の版はなにもしません) ページフッタに日付をいれないよう指示します。 x は表紙にのせる日付です。
.NH x y ...
番号付き節見出し。 x がレベルを与えます。 たとえば .NH 2 はレベル2の節見出し ( 1.1 からはじまる) をつけます。 x 0 の場合は番号のリセットが起こります。 x S の場合は第二引数以降を節番号にセットします。 たとえば .NH S 3 4 1 3.4.1 節の見出しをつけます。
.NL
文字の書体を標準に戻します。 元祖 troff では文字の大きさも標準に戻ります。
.OF x
(現在の版はなにもしません) 奇数ページのためのフッタ定義。 x には UNIX roff の .tl リクエストのための ' で区切られた 3つの文字列を与えます。
.OH x
(現在の版はなにもしません) 奇数ページのためのヘッダ定義。 x には UNIX roff の .tl リクエストのための ' で区切られた 3つの文字列を与えます。
.P1
(現在の版はなにもしません) 第1ページにもヘッダを表示することを指示します。
.PP
最初の行がインデントされた段落を始めます。 man(7) とは異なり、 .LP と全く同じものではありません。
.PX [no]
[未実装] Table of Contents の題字を印字 ( 引数 no を指定した場合は抑止されます) した後に目次を印字します。
.QP
引用段落をはじめます。 実装は段落を <BLOCKQUOTE> で囲むので、 インデントされることが期待されます。
.R
.B または .I によってフォントを変えた効果を打ち消して、 以下のテキストをローマン体 (斜体でも太字でもないという意味) に戻します。
.RE
相対インデントの終わり。
.RP
(現在の版はなにもしません) 論文スタイルの初期化。 元祖 -ms パッケージでは文頭に .RP を入れると最初のタイトルを含んだページの前に 別途タイトルページを表示するようになりますが、 htroff ではこのような処理は行われません。
.RS
右シフト。相対的にインデントされた領域を始めます。
.SH
次の行をセクションの見出しとして表示します。 現在の実装は <H3> タグを用いています。
.SM
(現在の版はなにもしません) 文字を小さくします。
.TA
(現在の版はなにもしません) タブ位置を標準値に設定します。
.TC [no]
[未実装] このリクエストを文書の末尾に置くと、目次を印字します。 引数 no を指定すると Table of Contents を印字しません。
.TE
tbl で処理した表の終わり。 (現在の版では ms マクロパッケージではなく標準マクロパッケージで定義されています)
.TL
文書のタイトル。 文書の先頭部 (初期化やマクロ定義などはこれいぜんにあってもよい) で 一度だけ用いられることが期待されています。 実装は <H1>...</H1> を生成します。
.TH
表のマルチページヘッダの終わり。
.TM
(現在の版はなにもしません) カリフォルニア大学バークレイ校の論文モード。
.TS [H]
元祖 troff ならば tbl(1) で処理されるところの表のはじめ。 もし引数 H を指定するとマルチページヘッダ (.TH まで) があることになります。 (現在の版では ms マクロパッケージではなく標準マクロパッケージで定義されています)
.UL x
x をアンダーライン付きで印字します。 アンダーラインと斜体の区別は nroff では失われることに注意してください。
.UX
UNIX というテキストに展開されます。 元祖 troff や groff ではこのマクロの初回の引用時だけに UNIX が登録商標である旨の断りを脚注や登録商標記号などで 生成する実装が多いようですが、何と書いたらよいやら調べるのが面倒だし 登録商標記号も移植性を下げるので、現在の実装はなにもしていません。
.XP
(現在の版では .LP へのエイリアスです) 1行目以外をインデントした段落を始めます。
.1C
(現在の版はなにもしません) 多段組または2段組の設定を打ち消し、 以下のテキストを1段組にします。
.2C
(現在の版はなにもしません) 以下のテキストを2段組にします。
.]-
(現在の版はなにもしません) refer による参照をはじめます。
.[ n
(現在の版はなにもしません) 参照の終わり。 0: 分類不能、 1: 論文、 2: 書籍、 3: 本の中の論文、 4: リポート。

定義済み文字列レジスタ

\*Q
二重引用符開き (現在の版では単に " を出力します)
\*U
二重引用符閉じ (現在の版では単に " を出力します)
\*-
ダッシュ (em ダッシュ。現在の版では --- を出力します)
\*(MO
htroff を起動した月 (November のような英語名)
\*(DY
"30 November 1998" のようなスタイルの、 htroff を起動した日付
\**
脚注番号 (使用するたびに増加する数字に置換されます)
\*'
アクサンテギュ、鋭アクセント (文字の前につける)
\*`
アクサングラーブ、重アクセント (文字の前につける)
\*^
アクサンシルコンフレックス、曲アクセント (文字の前につける)
\*,
セディーユ (文字の前につける)
\*:
ウムラウト (文字の前につける)
\*~
チルダ (文字の前につける)

参照

intro(1), htroff(1), mstd(7)

バグ

みてのとおり、現在の実装は手抜きのかたまりです。
HTML generated using htroff at 5 October 1999 17:28:57.