地球流体セミナー/ Workshop on Climate Modeling and Satellite Observations

積雲対流の大規模組織化の数値モデリング

九州大学 大学院 理学研究院
地球惑星科学部門
中島 健介
kensuke@geo.kyushu-u.ac.jp
2002 年 1 月 20 日


目次
  • wava-CISK :
  • WISHE :
問題
  • 海面水温固定実験に地球科学的意味があるか?
    • 海面風が海面水温に影響しない場合の考察である, とする.
  • 大気放射過程が陽に取り扱われていない.


背景: 様々な時間・空間スケールの変動が存在する.


背景: 赤外輝度温度
  • 水平スケールは O(1000km).
  • 冷たい場所が赤, 冷たい場所が青
  • 赤の領域が積雲に対応


背景: 積雲対流の空間構造に階層性が存在する.
    TRIMM による積雲画像 (南米上空)
  • 左上 : (可視? 赤外?)
  • 左下 : マイクロ波輝度温度 (降水を見ている)
  • 右上 : 高度 2 km 降水強度 (レーダー反射強度)
  • 右下 : 降水強度の鉛直分布 (レーダー反射強度)
ここで注目する "階層性" とは何か?
  • O(1000km) スケールの雲集団 (熱帯では "クラウドクラスター)内部に O(100km) のスコールラインが複数存在する.
    • GATE (1974) の観測による成果
  • O(100km) のスコールラインを構成する個々の積雲にも, 活発な領域と不活発な領域との差異がある.


熱帯積雲対流の時空間スペクトル (Wheeler et al., 2000)
    OLR の時空間スペクトル
  • 左図: 赤道反対称成分, 右図: 赤道対称成分
  • 実線は等価深度を適当に仮定した赤道波の分散関係

  • 季節内振動に対応する周波数成分は, スペクトルが寝ている
最近になってこのような図が書けるようになったのは何故か?
  • 最初にこのような図を書いたのは Takayabu (????)
  • 昔は 3 日以上の高周波成分をきちんと書くのが大変だった(?)


  • 分解能はどうするか?
    • 現状では結果あわせするしかない.

  • 積雲パラメタリゼーションには本質的問題は, クロージャーが閉じていないこと (林).
    • 積雲質量フラックスを計算する際に考慮する下降流は, GCM で分解可能なスケールを持つ (ハドレー循環下降流そのもの)




wave-CISK って何 ?
  • 赤道波(Yanai & Maruyama wave など)の励起源は何か ?
    • 積雲対流にともなう加熱によって励起されると考える
      • 加熱分布は鉛直に 2 つのモードに分解し, 下層の鉛直風が正の場合に加熱が生ずるとする.
      • 加熱分布が上層で大きく, 下層で小さいと第 1 モードの波と第 2 モー ドの波が相互作用し不安定化する.
      • 不安定波の波長と振動数から観測される波を説明しようと試みた.
    • 実は wave-CISK は波長が短いほど増幅率が大きい. 観測される赤道波の波長とは対応しない.

  • CISK に対する反論
    • そもそも熱帯大気を観測すると条件付き不安定にはなっていない
    • CISK は大気の基本的な成層状態が安定であるという考えに立っている.


降水分布の時空間断面図 (上層冷却の大きい場合)
  • 横軸は空間, 縦軸は時間


降水分布の時空間断面図 (下層冷却の大きい場合)


降水分布の時空間断面図 (上層冷却大, 回転ありの場合)


降水分布のスペクトル (上層冷却大, 回転ありの場合)




降水分布の時空間断面図 (上層と下層で冷却大, 中層で冷却小)






WISHE って何?
  • Wind Induced Surface Heat Exchange の略
  • 風下側に擾乱が伝播する

  • 単純に解析的に計算すると波長の短いものがより不安定になる.


降水分布の時空間分布


降水分布の時空間分布 (水平大領域, 2 サイクル連結)
  • 強弱のパターンが自然に発生する
  • 季節内振動の時間スケールに近い

  • 東進する大規模構造内に西進する小規模な構造が見える.
    • 観測された熱帯クラウドクラスターに類似な構造.

  • 対流場の様子 [アニメーション(mpeg)]






参考文献

  • Wheeler M, G. N. Kiladis, and P. J. Webster, 2002: Large-scale dynamical fields associated with convectively coupled equatorial waves, J. Atmos. Sci., 57, 613-640.
  • Wheeler et al., 2000
  • Takayabu, Y. N., 1994: Large-scale cloud disturbances associated with equatorial waves. 1. Spectral features of the cloud disturbances, J. Meteor. Soc. Japan, 72, 433-449.
  • Takayabu, Y. N., 1994: Large-scale cloud disturbances associated with equatorial waves. 2. Weastward-propagating inertio-grabity waves, J. Meteor. Soc. Japan, 72, 451-465.
  • TRMM: http://www.eorc.nasda.go.jp/TRMM/Gallery/tev/pdf/tev_11.pdf
  • GMS 赤外画像 http://www.gfd-dennou.org/arch/dcsatel/
  • Numaguti and Hayashi, 1991a:
  • Numaguti, A., and Y.-Y. Hayashi, 1991: Behavior of cumulus activity and the structures of circulations in an aqua planet mode. 2. Eastward-moving planetary scale structure and the intertropical convergence zone. J. Meteor. Soc. Japan, 69, 563-579.


Odaka Masatsugu 2002-01-20