回転対流

裏話

ちょっとした遊び

もともと, この実験はマントル対流を念頭においた学生実験として始まった. 回転系の実験は, 本来の学生実験とは無関係に, ちょっとした遊びのつもりで始めたものである.

したがって, 当初は深く考えることなく手持ちの小さな回転台に乗るような 小さなクーラーを自作して実験を開始した.

蒸気機関車の機関士

そのクーラはペルチェ素子を使った小さなものであったのだが, これが非力でなかなか温度差がつかない. しかたがないので, 温度計を見ながら回転台の外から小さな氷を冷却水に投入し, 一定温度を保つことにした. 温度差を大きくすると, 頻繁に氷を投入しなければならず, 水槽の回転にあわせてリズミカルに氷の投入を続ける様は, まるで蒸気機関車の機関士のようであった.

怪我の功名

この装置で実験できるパラメータ範囲は, 臨界レイリー数に近い地味な領域に限られる. 1990年代にもっと高レイリー数の実験が盛んに行われるように なっていたのだが, それに比べると,時代遅れの実験になってしまった. もともと,最先端の実験をするつもりはなかったので, これは当然といえば当然である.

ところが, 実験をしながら文献を調べていくと, とっくの昔に調べがついているだろうと思われる事柄が いくつも未解決のままになっていることがわかってきた. こんな簡単な実験でも,新しい事実をいくつか見つける ことができたのである.

もし, 最近の論文をよく読んでいたら, そもそもこんなパラメータで実験してみようと 思わなかったに違いない.