[deepconv/arare/sample]

音波の振幅の見積もり方

ここでは 音波計算(2) で示した音波の振幅 の見積もり方法について説明する.

速度偏差の振幅の見積もり

見積もりに用いる式は線形化された x 方向の運動方程式
du/dt = -cpθ dπ/dx
である. ここで u, π はそれぞれ速度と圧力の基本場からの偏差, θ は基本場の温位, cp は定圧比熱である. この式を時間方向に離散化すると,
uin+1 = uin -Δt cpθ dπ/dx
となる. O(u) を u=0 の状態から N ステップ計算して得られた値として 評価すると,
O(u) = NΔt cpθ dπ/dx
となる.

音波計算(2) の設定では,

cp = 1000 J/(K kg)
θ = 298.15 K
cs = 350 m/sec
であることと,
O(dπ/dx): (初期の圧力偏差の振幅) / (初期値の半値幅)
NΔt: (初期値の半値幅) / (音速)
として O(u) を見積もると,
O(u)
= NΔt cpθ dπ/dx
= 700 / 350 x 1000 x 300 x 0.006 / 700
= 5 m/sec
となる. 計算結果に示した u の最大振幅 (約 4 m/sec) は, この値と同程度である.

圧力偏差の振幅の見積もり

見積もりに用いる式は x 方向 1 次元の圧力偏差の式

dπ/dt = αd(ρθU)/dx
α = cs2 / cpρθ2
である. ここで ρ は基本場の密度である. この式を時間方向に離散化すると,
πin+1 = πin + Δt cs2 / cpθ du/dx
となる. ρ=ρ(z), θ=θ(z) であることに注意する. O(u) と同様に, O(u)を π=0 の状態から N ステップ計算して得られた値として評価すると,
O(π) = NΔt cs2 / cpθ du/dx
となる.

O(du/dx): O(u) / (初期値の半値幅)
NΔt:(初期値の半値幅) / (音速)
とし, O(u) = 5 m/sec として O(π) を見積もると,
O(π)
= NΔt cs2 / cpθ du/dx
= 700 / 350 x 3502 / 1000 / 300 x 5 / 700
= 6 x 10-3
O(u) として実際に計算された平均的な u の値 (3 m/sec) を用いると,
O(π)
= NΔt cs2 / cpθ du/dx
= 700 / 350 x 3502 / 1000 / 300 x 3 / 700
= 3.6 x 10-3
となる. 前者は計算された π の値よりやや大きく, 後者はほぼ同じ値である.
Last Update 2004/11/16 (北守 太一, 杉山 耕一朗, 小高正嗣)