/森羅万象学校 /2007-03-19/

後期重爆撃期と小惑星 (1):
Introduction

伊藤孝士 (国立天文台)
2007 年 3 月 20 日
表紙


話の内容


話の結論


はじめに


自然科学研究機構(NINS)


国立天文台


天文シミュレーションプロジェクト


問題意識と方針


太陽系の歴史=衝突の歴史


クレータには不明点がたくさん
  • わかっていること
  • クレータ形成の物理: 衝突天体のサイズとクレータのサイズとの関係
  • 大きなクレータ(50 km 以上)についての情報は多い
  • わかっていない事柄
    • クレータがいつできたか?
    • レータの密度の大きい天体表面の地形は古いと地形であるとはいえるが...


    後期重爆撃期
    "late state heavy bonberdment"
    • ここでは 38-40 億年前の激しい衝突を指す
    • "late" というのは惑星形成期にくらべずっと後, という意味
    • 人によって言葉の定義が異なる
    • 月の盆地を作ったような衝突という人もいる
    • 40 億年前に特異な現象であったという人は cataclysm とも言っている


    月への落下天体の時間変化
    • 月の盆地に残されたクレータのサイズから, 衝突天体質量を見積もる
      • 同時に岩石を採取してクレータの形成年代を図る
      • 盆地の形成とクレータの形成は同じ年代と仮定
    • 38-45 億年前の期間の履歴はよくわからない
      • 盆地の形成時間をどう仮定するかによって, 落下天体の質量の見積もりが変わる
      • 38-40 億年の月の岩石データは 10 個弱
      • 45 億年前は惑星集積理論による見積もりに接続する.
    • 後期重爆撃期
      • 38-40 億年に衝突天体質量に極大期
      • 現在からさかのぼって考えた場合に, 38 億年頃の傾きに沿ったまま 衝突天体質量が単調増加したとすると, 月の質量が説明できない(らしい).


    後期重爆撃期を示唆する証拠(1)
    Tera et al. (1974)
    • 月の高地の岩石の年代を測定し(左図), 衝突フラックスを推定 (右図, cataclysmic view 1, 2)
    • いまだによく引用される論文


    後期重爆撃期を示唆する証拠(2)
    Ryder (1990)
    • 月の海の岩石の年代測定


    後期重爆撃期を示唆する証拠(3)
    Kring (2005)
    • アポロの持ち帰った石には 40 億年より古いものが少ない


    後期重爆撃期を示唆する証拠(4)
    Cohen et al. (2000)
    • 月起源いん石の年代測定


    後期重爆撃期を示唆する証拠(5)
    Bogard (1995)
    • 小惑星 (Vesta) 起源のいん石 (HED いん石) の年代を測定
      • eucrites : 玄武岩的な組成
      • howardites: かんらん岩的な組成
      • 巨大なクレータが表面にあるため, マントル物質的な組成が分光で計測される
      • 直径は 400 km, 分化を起こしてもよいサイズ


    後期重爆撃期に関する推定
    • 月に衝突した天体の総質量は SP-Aitken クレータを作った衝突天体を考慮すると, ちょっと変わる


    後期重爆撃期説への反論
    • Stone Wall : 現在の月の岩石資料ではそこから先はわからない, という境界


    後期重爆撃期の呼称
    • Late Heavy Bombetdment (LHB)
      • 惑星形成後から 38 年前までの比較的広い期間を指す
    • Terminal Luna Catalysm
      • 40 億年前頃の衝突の極大期


    不定な物事だらけ


    参考文献

    • Bogard,D.D., Impact ages of meteorites: A synthesis, Metteoritics 30, 244-268 (1995)
    • Cohen,B.A.,T.D.Swindle,D.A.Kring, Support for the Lunar Cataclysm Hypothesis from Lunar Meteorite Impact Melt Ages, Science 290, 1754-1756 (2000)
    • A proposal for NASA Research Announcement NNH05ZDA001N-IES "Collisional Evolution of Young Planetary Systems: Cataclysmic Bombardment in Our Own Solar System and Elsewhere" PI = David A. Kring, 2005
    • Ryder,G., Mass flux in the ancient Earth-Moon system and benign implication for the origin of life on Earth, J.Geophys.Res., 107(E4), 5022 (2002)
    • Ryder,G., Lunar samples, lunar accretion and the early bombardment of the moon, Eos Trans.AGU, 71(10), 313 (1990)
    • Tera,F.,D.A.Papanastassiou,G.J.Wasserburg, Isotopic evidence for a terminal lunar cataclysm, EPSL 22, p.1 (1974)

    Tomoko Iwahori 2007-10-09