進学希望の人へ

はしもとじょーじ
Last Updated on 1 Nov., 2006.



 肩書きがついたからだと思いますが、研究指導を受けたいと訪ねてきたりメールを送ってきたりする人が現れるようになりました.というわけで、進学希望な人に向けたQ&Aを作ってみました.ただし以下は「はしもと」の私見です.研究室の他の構成員は違うことを考えていると思うので、ご注意ください.


1.ほにゃららな研究はできますか?

 根本的にこういう質問は間違っていると思うのだが、よく質問される.研究するのはあなた自身なのであるから、できるかできないかはあなた次第であり、そんなことを質問されても答えようがない.

 これだけだとちょっと不親切かもしれないので、少し補足.
「ほにゃららな研究をしたいのですが、やってもいいですか?」
という質問は理解可能である.はしもとの基本的な方針は「研究テーマを選ぶのは学生さんの自由であり何をやってもらってもよい」なのですが、受け入れる以上は受入側にも面倒を見る義務が発生します.なので、さすがに義務を果たすことが難しいと思われるような内容の研究を希望する学生さんは、理由を説明してお断りすることになります.また、研究の内容によってはうちの研究室よりよその研究室へ行った方がよいということもあるわけで、そういう場合にはよその研究室を選択することをお勧めすることになります(状況を理解した上で、それでも神戸・大気水圏研究室がいいということなら拒みませんが).
 受け入れ可能な場合には、続けて
「研究を進める上で、どのようなサポートを受けられますか?」
という質問をしてみるのもよいでしょう.研究を行うのはあくまで本人自身ですが、もちろん一人で研究しなさいと言っているわけではありません.受入教官は学生の能力に合わせて助言・助力していくし、研究室の構成員もあなたの研究活動をサポートする力強い味方となります.だから、どのようなサポートが受けられるかと質問することは、あなた自身のやりたい研究を行うことができるかどうか判断する上での、重要な情報になるものと思います.

2.どんな研究テーマがありますか?

 基本的な方針として、何を研究するかは学生さん自身に決めてもらうようにしています.研究テーマの設定は研究において最も楽しい部分のひとつであることと、研究に主体的に取り組むという自覚を持ってもらうという意図もあって、そのような方針にしています.
 とはいえ研究室に来る前から確固とした研究テーマを持っている必要はありません(最初から独力で研究テーマを設定できる人は少数だと思います).研究室では、個々の学生の興味・資質・能力などを見極めながらサイエンスとして意味のある研究テーマを探す方法について指導します.この指導は主に学生との議論を通じておこなわれます.最初は何か漠然としたものでもよいので、自分が興味を持っていることを教官に話してみてください.教官と議論を重ねていくなかで、ぼんやりした興味の対象を具体化し形ある研究テーマにしていく方法を学んでください.そして自分自身でしっかり考えて納得のいく研究テーマを見つけてください.

3.大気水圏科学で研究してることと、気象庁がやってることは何が違うのですか? 気象庁でやっていることを、大学でやる意味があるんですか?

 うちの研究室(大気水圏科学)と気象庁は、目指しているところが全く違います.
 うちの研究室が目指していることは、大気水圏(気象・海洋・陸水・その他の流体もろもろ)における現象の理を解き明かすことです.一方、気象庁が目指していることは、天気予報を的中させること.両者の目的は全然違います.物事の理がわかることは、必ずしも直ちに天気予報を的中させることに貢献するわけではありません(長い目で見れば必ず貢献することになるはずですが).うちの研究室がやっている理学とはそういうものです.それに対して気象庁は天気予報の的中率を上げることを至上命題としています.ざっくり言うと、物事の理など知る必要はなく、とにかく当たるようになればよい.もちろん何の理屈もなしに天気を予報するのは難しいから、それなり理屈も考えるわけですが、それはあくまで手段であって目的ではないわけです.
 どっちが重要とか高級とかいう問題ではありませんが、両者は明らかに違います.もちろんどちらも相手にしているのが大気や海洋だったりするので、非常に関係は深いしお互いの交流も活発です.でも目的とするところが違うということは、きちんと理解しておいた方がよいでしょう.



George L. HASHIMOTO